Topic No.191筋骨格系疼痛患者にプライマリケアで復職支援サービスを加えることで得られる効果
G Wynne-Jones, et al. Pain 2018; 159(1): 128-138
要約
緒言
筋骨格系疼痛は休職の原因となり、長期の休職による健康上、経済上の問題を予防するために早期の対処が推奨されている。本研究は、プライマリケアに加えて復職支援サービス(vocational advise service, VA)を行うことで得られる効果をランダム化比較試験にて検証した。
方法
対象はプライマリケアを訪れた筋骨格系疼痛患者で、年齢が18歳から70歳で、痛みのために6か月未満の休職中または医師/専門看護師によって痛みのために仕事が困難であると判断された労働者とした。除外基準は緊急の医学的処置が必要となるような兆候を示す者、重篤な精神・心理的問題を呈する者、6か月以上休職中の者とした。プライマリケア単位で、VAを追加する群、プライマリケアのみで対処する群(コントロール群)にランダムで割り付けた。VA群、コントロール群の両群とも復職に焦点を当てたプライマリケアが医師または専門看護師によって提供された。VA群では追加で、理学療法士によるVAが行われた。VAは以下の①から③を段階的に、対象者の希望に応じて行われた。①電話にて、仕事および健康に関する考え方や復職を妨げている因子の評価を行い、復職までのスケジュールを設定する。②面談にて、復職を妨げている因子の詳細な評価と対応策の作成を行い、復職プランを改良する。③追加の面談で対象者に応じたアドバイスを行い、必要があれば職場への介入や他の支援の紹介を行う。プライマリアウトカムは4か月間および12か月間の痛みによる休職日数とした。
結果
VA群は158名、コントロール群は180名で、4か月間の休職日数(平均〔標準偏差〕)はそれぞれ9.3(21.7)日、14.4(27.7)日でVA群が短く、罹患率のオッズ比は0.51(95%信頼区間0.26-0.99)であった。12か月間の休職日数は20.3(40.6)日、24.3(50.7)日であった。VAを加えることの経済的効果は733£で、休業を防ぐことで748£得られ、VAにかかるコストが15£であった。
考察
本研究のVAは段階的なプロトコルとなっているが、研究参加者の大多数は電話での介入のみとなっており、低強度、低コストの介入といえる。また、VAで得られた患者の痛みや仕事に対する考え方、復職を妨げる因子はプライマリケア医師や看護師にフィードバックされることでプライマリケアでの対処の質が向上している可能性がある。
コメント
この研究では、両群とも1時間の教育セッションを受講した医師または看護師によって「痛みがあっても仕事を行うことは可能であり、長期の休職はかえって害になる。復職を計画し、支援することが医学的マネジメントの重要な側面である。」という方針のもとでプライマリケアが提供されている。VAは費用対効果に優れた介入であり、適応患者を拡充する今後の研究や臨床への応用が期待されるが、前提となっているプライマリケアでのマネジメント方針が広く浸透することが重要とも考えられる。
ホームページ担当委員:下 和弘