toggle
肩の痛み、膝の痛み、腰痛、神経痛など、慢性の痛みに関する総合情報サイト
2018-12-06

Topic No.107
胸髄レベルの完全脊損患者の大脳機能変化

Functional Reorganization of the Brain in Humans Following Spinal Cord Injury: Evidence for Underlying Changes in Cortical Anatomy.
Luke A. Henderson, et al. J Neuroscience. 2011;31:2630-37.

要約

背景/目的:
脊髄損傷により求心性(感覚神経)線維が減少すると、大脳の第1次感覚領域(S1)の機能的再構成がおこる。この現象は、動物実験では大脳解剖での物理的変化がおこっており、休止状態のシナプスが活性化される訳ではないことが分かっている。では、ヒトにおいては大脳解剖にどのような変化が起っているのかをfMRIを用いて調査した。

方法:
20名の完全胸髄損傷患者(SCI)群と23名の健常人を対照群とした。
タスク:右口角、右母指、右小指、右母趾を、先の尖ったプラスティックブラシで2ストローク/秒を30秒間施行し、30休憩を合計6セットおこなった。
その反応を3T fMRIを用いて以下の事を調査した。
①患者群と対照群で、それぞれのタスクを施行した時、S1の再構成領域が異なってくるのか?
②患者群と対照群で、母趾のタスクを施行した時、S1領域灰白質のVolumeに差がでるのか?
③患者群と対照群で、小指のタスクを施行した時、FA(fractional anisotropy)値に差がでるのか?
④患者群と対照群で、小指のタスクを施行した時、大脳視床路のFA値に差がでるのか?

結果:
①図に示すように、対照群と比較して患者群では、小指、母指のS1領域は正中側に移動していた。しかし、唇のS1領域は同じだった。
②母趾のS1領域が正中に移動が大きい患者ほど、そのS1領域の灰白質Volumeは減少していた。
③小指のタスクでは、対照群と患者群でFA値に有意な差はなかった。しかし、小指のS1領域が正中側への移動が大きい患者ほど、FA値は減少していた。
④小指タスクでは、対照群と患者群で大脳視床路のFA値に有意な差はなかった。

コメント

完全胸髄損傷患者で、求心性路の障害によりS1領域がこれほど変化していることに驚いた。胸髄完全損傷のみならず頸髄損傷の不全型でアロディニアを主訴する患者では、どのような大脳機能変化が起っているのか非常に興味がわく。

ホームページ担当委員:竹内 幹伸