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2018-12-06

Topic No.93
腰痛患者の姿勢調節反応 ―上肢運動時―

An exploratory study on the effect of pain interference and attentional interference on neuromuscular responses during rapid arm flexion movements.
Lariviere C, et al. Clin J Pain. 2013 Mar;29(3):265-75

要約

腰痛患者における上肢運動時の姿勢調節反応の特徴について、疼痛や疼痛回避思考との関連および注意干渉による影響について解析した研究。

方法:
●対象者:慢性腰痛患者(CLBP群)59名
●質問用紙:疼痛の程度(VAS)、疼痛破局化思考尺度(PCS; Pain Catastrophizing Scale)、運動恐怖(TSK; Tampa Scale of Kinesiophobia)、腰痛関連QOL(RDQ; Roland-Morris Disability Questionnaire)
●上肢屈曲課題
流れ:スクリーンの前に立ち、以下の課題実施時の体幹筋表面筋電図および角度を計測する。
①右上肢を屈曲
②スクリーンに右矢印が投影されたら、出来るだけ早く右上肢を屈曲
③スクリーンに矢印が投影されたら、矢印が向いている側の上肢を、出来るだけ早く屈曲
●測定項目:
①表面筋電図(①L5多裂筋、②L3腸肋筋、③L1最長筋、④T10最長筋、⑤三角筋前部線維、⑥腹直筋、⑦外腹斜筋、⑧腹横筋/内腹斜筋混合)8部位×左右
②角度(肩関節屈曲、腰椎(T12-仙骨部))

結果:
●VAS、TSK、PCSの点数が高い患者ほど、各腰部筋において、上肢運動前に生じる筋活動が有意に大きく、さらに上肢運動に対する反応が有意に早かった。
●課題③のような「他に注意を要する課題(注意干渉課題)」では、他の課題と比べて全ての体幹筋活動において活動が有意に減少した。

考察:
●TSKおよびPCSともに疼痛回避思考を反映する質問用紙である。つまり、疼痛が強く、疼痛回避思考の強い患者では、腰痛や脊椎の動揺を避けるため、四肢の動きに対して体幹筋が過剰に作用すると考えられた。
●しかしながら、上肢運動以外に集中を要する課題下では体幹筋の活動が顕著に減少することから、日常生活において家事や仕事に集中している際には腰痛の原因となる傷害を生じやすいと考えられた。

コメント

本研究は腰痛患者における姿勢調節機構について、疼痛や疼痛回避思考などの程度を含めて解析したものである。痛みの認知が身体反応に及ぼす影響について理解することは、慢性疼痛の病態説明や効果的な運動療法の実施に繋がり、疼痛の遷延化や二次的な運動器疼痛の予防に役立つと考える。 また、本研究では、重ねて注意干渉課題を負荷することで、より日常生活にて生じ得る身体反応を惹起するよう試みた点に新規性がある。

ホームページ担当委員:宮崎 温子