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2018-11-30

Topic No.65
触覚識別トレーニング中に、健側の鏡面像を利用するとその効果は増強される

The effect of tactile discrimination training is enhanced when patients watch the reflected image of their unaffected limb during training.
Moseley GL, et al. Pain. 2009 Aug;144(3):314-9.

要約

CRPS症例に対して、触覚識別トレーニングと比較して、触覚識別トレーニングに鏡療法を組み合わせたトレーニングの効果が増強されるか検討した。

方法:
10症例が以下の4つの条件で、30分間の触覚識別トレーニングを行なった。
A:顔は触覚刺激されている患肢側を向いており、健肢側の鏡面像を見ている
B:触覚刺激されていない健肢側を直接見る
C:顔は触覚刺激されている患肢側を向いているが、健肢は隠されているため、健側の鏡面像は見ることができない
D:顔は触覚刺激されていない健肢側を向いているが、健肢は隠されており見ることができない
触覚刺激は直径2mmと11mmのプローブを用いて、患側の手背部5ヶ所にランダムに行い、プローブの種類と刺激場所を識別するように求めた。

結果:
● トレーニング時に健肢側の鏡面像を見た場合(条件A)、2点識別覚の短期効果は、他の条件と比べ有意な改善がみられ、安静時痛もより改善した。また痛みの変化と2点識別覚の変化は強く相関した(r=0.83)。
● 長期的(トレーニング2日後)をみても、条件Aの2点識別覚の改善効果は持続しトレーニング前よりも8mm改善した。しかしながら、痛みに関しては他の条件と比較して変わらなかった。

コメント

Moseleyらは先行研究においてCRPS症例に対して触覚識別トレーニングが触覚刺激のみを行なう群や対照群と比較して、より痛みが減少し、触覚の鋭敏さも改善することを報告している。鏡を用いたMirror TherapyはRamachandranが始めに幻肢痛患者に対して効果的であることを報告しており、 McCabeらは初期のCRPS患者に対してMirror Therapyが効果的であることを報告している。 本研究ではこれらの先行研究の結果を考慮して、視覚情報と触覚とをうまく融合させた手法の効果を報告している。近年の研究において、CRPS患者は中枢神経系の変調が生じていることが明らかになってきていることから、本研究は本邦の臨床現場におけるCRPS患者に対する理学療法への応用が期待される。

ホームページ担当委員:西上 智彦