Topic No.190認知症の行動・心理症状と痛みの関連
Sampson EL, et al. Pain. 2015; 156:675-83. doi: 10.1097/j.pain.0000000000000095.
要約
目的
本研究は,総合病院入院中の認知症患者を対象として,痛みと認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia; BPSD)の関連を検討することを目的とした。
方法
総合病院入院中の認知症患者230名を対象とした。痛みの評価には,Self-reported painとPain Assessment in Advanced Dementia scale(PAINAD)を用いた。Agitationの評価にはCohen-Mansfield Agitating Inventory(CMAI)を用い,BPSDの評価にはBehavioural Pathology in Alzheimer Disease Scale(BEHAVE-AD)を用いた。
結果
・入院期間中の痛みについて,Self-reported painを用いて測定した結果,39%の患者が痛みを有していた。
・入院期間中の痛みについて,PAINADを用いて測定した結果,19%の患者が安静時に痛みを有しており,57%の患者が動作時に痛みを有していた。
・PAINADとCMAIの関連を検討した結果,有意な関連は認められなかった。
・PAINADはBEHAVE-ADと強い関連を認めた。PAINADとBEHAVE-ADの下位尺度の関連を検討した結果,PAINADは,BEHAVE-ADの攻撃性尺度および不安尺度と最も強い関連を認めた。
考察
総合病院入院中の認知症患者は,痛みを有する者の割合が多く,痛みはBEHAVE-ADと関連することが示唆された。認知症患者の痛みを治療することは,認知症の行動・心理症状を改善させる可能性がある。
コメント
認知症は,総合病院においても重要な問題のひとつである。本邦では,2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症高齢者になると推計されている。未曾有の高齢社会を迎える中で,認知症に対して多方面からの対策が期待される。
ホームページ担当委員:林 和寛