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2018-11-29

Topic No.40
非特異的亜急性腰痛に対する生物心理社会的介入、学際的治療が社会的コストに及ぼす効果を調べるランダム化試験プロトコール

Study protocol of cost-effectiveness and costutility of a biopsychosocial multidisciplinary intervention in the evolution of non-specific subacute low back pain in the working population: cluster randomised trial.
Berenguera A, et al. BMC Musculoskeletal Disorders 12: 194,1-9, 2011.

要約

本研究の目的は、非特異的亜急性腰痛(LBP)に対する生物心理社会的介入、学際的治療のコスト対効果、コストユーティリティーを通常のケアと比較して調べることである。

方法/デザイン:
特異的亜急性腰痛(LBP)に対して、生物心理社会的介入、学際的治療を受けた群と通常のケアを受けた対照群のコスト対効果を比較するクラスターランダム化臨床試験、コストユーティリティー解析を行う。対象は、カタロニア地方の38の一次医療センターで非特異的亜急性LBPの診断を受けた18歳から65歳までの患者932例で行う。
生物心理社会的介入、学際的治療は、1名のGP、1名の看護師、1名の臨床心理士、1名の理学療法士が行う。プログラムの詳細は表1に示す。通常のケアとは “成人の腰椎障害に関する実地臨床ガイドライン”をもとにした治療を行う。
効果は、Roland Morris障害スコア(RDQ)、不安とうつ、痛みの持続日数、病気欠勤日数(%と日数)の減少、薬物処方の減少、薬物治療の期間、12ヶ月時点でのLBPの再発回数と慢性LBPへの進行、Fear Avoidance Beliefs Questionnaire(FAB)(0-24のスケール;スコアが低いほど恐怖回避思考が低い)について調査する。
コストの測定(表2)における、間接非医療費は、生産性の低下も含めて、非勤務(欠勤)時間や、職場での生産性の低下状態(presenteeism)をもとに計算する。回答者には、勤務時間内にどの程度の労働を実施したかについて質問し、通常の勤務と比較した場合の、この労働の質について質問する。評価時点は、3ヶ月(慢性LBPへの変化する時期)と12ヶ月(長期評価)とする。

考察:
非特異的亜急性腰痛では恐怖、回避行動などの因子が強い患者ほど慢性化率が高くなること、そのような患者では、心理的因子や社会的因子を考慮した認知行動療法が、慢性化のリスクを減少させるのに有効であることが示されている。非特異的亜急性腰痛、慢性腰痛に対する生物心理的介入、社会学際的治療の有効性については多くの報告があるが、経済性アセスメントはいまだ行われていない。
生物心理社会的介入、学際的治療のコスト対効果ならびにコストユーティリティーが実証されれば、プライマリーケアでの応用、LBP期間の短縮、再発率の低下、クオリティーオブライフの向上、慢性LBPの発症率の低下、病気欠勤や職場での生産性の低下状態の日数短縮、薬剤費の低減、LBPにかかる医療費を含めた社会的コストを削減することが期待される。

コメント

慢性疼痛に対する学際的治療のコスト対効果やコストユーティリティーを解析した研究はこれまで施行されていない。 本論文は非特異的亜急性腰痛に対する生物心理的介入、学際的治療の研究プロトコールに関するものであるが、このような研究で、慢性疼痛に対する学際的治療のコスト対効果ならびにコストユーティリティーが実証することが期待される。

ホームページ担当委員:福井 聖