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2018-11-29

Topic No.42
非特異的腰痛に対する運動療法の効果は身体機能の改善と対応しているのか?-システマティックレビュー-

Is a positive clinical outcome after exercise therapy for chronic non-specific low back pain contingent upon a corresponding improvement in the targeted aspect(s) of performance? A systematic review.
Steiger F, et al. Eur Spine J. 2012 Apr;21(4):575-98.

 

要約

本レビューでは,非特異的慢性腰痛に対する運動療法による臨床症状(痛み,機能障害)の変化と身体機能(筋力,可動性,筋持久力)の関係を調べ,運動療法の効果の特性について検討した。

方法/デザイン:
2010年4月までに発行された非特異的慢性腰痛に対する運動療法に関する論文を,Medline,Embase,Cochrane Library,PEDroで検索し,臨床症状(痛み,機能障害)の変化と身体機能(筋力,可動性,筋持久力)の関係を調査した。

結果:
○1,476論文の内16論文が抽出条件に該当した。
○疼痛の軽減は,脊椎可動性や体幹伸展・屈曲筋力,体幹筋持久力の改善と関係があるというエビデンスは得られなかった。
○同様に,機能障害の改善と可動性や筋力の改善との関係も高いエビデンスは得られなかったが,疼痛軽減と身体機能改善との関係に比べ,わずかながら関係性を認めた。

結論:
非特異的慢性腰痛に対する運動療法の効果は,筋骨格系の変化によるものではないことが示されたことから,局所の変化よりも心理や認知あるいは神経生理学的な適応といった中枢の変化が関係している可能性が考えられる。

コメント

非特異的慢性腰痛のような症状に対しては,筋力強化や関節モビライゼーションのようなある一部分の身体機能に対するアプローチでは効果が得られないことがわかる。 昨今,慢性疼痛については,神経系の感作や脳の可塑的な変化に起因するといった病態メカニズムが提示されていることから考えても本論文の結果は納得のいくものである。しかし,運動療法そのものは各国のガイドラインにおいて決してエビデンスの低いものではないことから,その適応や目的,方法を十分理解したうえで実施することが重要であると考える。

ホームページ担当委員:城 由紀子