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2018-12-06

Topic No.105
頭痛に対する怒り意識・表現トレーニングとリラクゼーショントレーニングの効果:無作為化研究

Effects of Anger Awareness and Expression Training versus Relaxation Training on Headaches: A Randomized Trial
Slavin-Spenny O. et al. Ann Behav Med. 2013 Oct;46(2):181-9

要約

背景/目的:
ストレスは頭痛に関与しており,負の感情を減少させるリラクゼーショントレーニングは有効であることが報告されている.怒りの感情を抑制することは痛みに関与しており,実験的な研究において,怒りを表出することは痛みを減少させることがわかっている.本研究では頭痛患者に対して怒り意識・表出トレーニングを行った.

方法:
対象は(a)1ヶ月に少なくとも数回頭痛を持ち,(b)頭痛の程度が中程度から重度,(c)ストレスマネージメントを実施することを希望する大学生147名とした.患者は87.8%が女性で,平均年齢は22.1歳であった.147名を怒り意識・表出トレーニング,リラクゼーショントレーニング,何も行わない対照群に無作為に振り分けた.
怒り意識・表出トレーニングは,まずセッション1にて,患者はストレスが頭痛を引き起こすことや怒りの抑制がストレスの要因になることを教育された.次に,怒りを認識したり,表出するためのエクササイズ(話す,叫ぶ,怒りの表情や姿勢を行う)ことを行った.セッション2にて,怒りを経験した時に怒りに適応する手法を学んだ.セッション3にて,自己主張することを練習した.評価はベースラインと4週間後に行った.

結果:
両方の介入は頭痛を管理する自己効力感が増加し,一方で,怒り意識・表出トレーニングのみ失感情症スコアが改善した(下表).
頭痛の頻度や重症度などは対照群に比べて有意に改善していたが,意識・表出トレーニングとリラクゼーショントレーニングに有意な差は認められなかった(下表).

コメント

慢性痛の要因として加害者や医療者への怒りが関係している場合がある.近年,この研究のように怒りを表出していくような試みが行われつつある.今後,本邦においても適応症例には実施していく必要があると考える.

ホームページ担当委員:西上 智彦