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2018-12-03

Topic No.80
頸椎変性すべり症の自然経過

The natural history of degenerative spondylolisthesis of the cervical spine with 2- to 7-year follow-up.
Park MS, et al. Spine (Phila Pa 1976). 2013;38(10):205-210.

 

要約

背景/目的:
頸椎変性すべり症は50歳以上に多く、全体の有病率は5.2%-11%と言われている。そして、それは不安定性を引き起こし、手術を必要とする。しかし、すべりを伴う頸髄症の椎弓形成術後は、不安定を悪化させないとの報告が散見されている。この矛盾する報告は、この病態に対する自然歴が十分分かっていないからに他ならない。そこで今回、頸椎変性すべり症の自然経過を調査した。

方法:
対象は、筆頭筆者が所属する病院を受診し、頸椎レントゲン撮影をした697人中、下記の1、2を満たした患者とした。
1.50歳以上。
2.頸椎側面中間位レントゲン画像で、隣接する椎体後壁面から1mm以上のすべりを認める人を頸椎変性すべり症と診断した。
*不安定の定義:頸椎側面前後屈像で2mm以上のすべりあり。
*すべりの進行の定義:頸椎側面中間位像で、Study開始時より2mm以上のすべりの悪化を認めた時とした。
*除外:外傷、感染、腫瘍、変形、頸椎手術の既往

●頸椎変性すべりを認めた人:27人(3.9%;27/697人)。前方すべり6人、後方すべり21人。
●レベル:C2/3;1人、C3/4; 9人、C4/5; 11人、C5/6; 6
●患者平均年齢;59歳(50-83歳)
●男女比;16:11
●平均追跡機間;39ヶ月(24-92ヶ月)

結果:
●追跡期間中、頸椎すべりが進行した人は0人だった。前方/後方すべりのどちらにおいても、初診時と最終フォロー時ですべりの程度に有意差は無かった。
●各レベルにおいても、初診時と最終フォロー時ですべりの悪化は認めなかった。
●後方すべりを伴った21人中7人は、初診時に頸椎不安定性があったが、最終フォロー時に不安定性を認めたのは4名だった。初診時に不安定性の無かった14人中3人は、最終フォロー時に不安定性を認めた。
●前方すべりを伴った6人中3人は、初診時に頸椎不安定性があったが、最終フォロー時に不安定性を認めたのは3人全員だった。初診時に不安定性の無かった3人は、最終フォロー時にも不安定性は認めなかった。
●初診時症状:8人が頸部痛、7人が神経根症、1人がミエロパチー、11人が無症状だった。症状のあった16人中、2人に手術が勧められ、1人はミエロパチーで椎弓形成を施行した。もう1人は神経根症で手術を勧めるも拒否されたが症状の進行は無かった。その他の症状を有する人達も症状の進行は無かった。

コメント

翻訳者は頸椎レントゲンで異常があるだけでは手術適応は無いと考える。しかし、そこに症状が加わると判断が難しくなる。この研究により、症状を有し画像上異常があった場合でも、進行はほぼ無いと考えて良いと分かった。しかし、中等度のミエロパチーを有している場合はどうなのか疑問が残るところである。

ホームページ担当委員:竹内 幹伸