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2018-11-30

Topic No.66
高齢者ロコモティブ症候群に対するDVDセルフエクササイズ

Development and evaluation of a video exercise program for locomotive syndrome in the elderly.
Hashizume H, et al. Mod Rheumatol. 2013 Mar 30.[Epub ahead of print]

 

要約

橋本市(和歌山県)にて実施された前向きcohort研究で、ロコモティブシンドロームの改善のために高齢者が地域や自宅で持続的に実施可能な運動プログラムの開発と、運動の実施にあたってDVDを用いる方法とパンフレットを用いる方法(運動の内容は同一)のいずれが有効かについて検証した。

方法:
運動プログラムの内容は移動能力および筋力のトレーニングの10種とした。
● 研究①では高齢者20名に対して運動プログラムの遂行による心拍数、SpO2、Borgスケールの変化を調べた。
● 研究②では、高齢者120名をDVDによる運動プログラムを行う群(DVD群)、パンフレットによる運動プログラムを行う群(パンフレット群)、運動プログラムを行わない群(コントロール群)の3群に割り付けた。
運動プログラムは1日2回実施するように指導し、実施の度合を調べた。各群とも介入前、介入3ヶ月後において腰痛と膝痛のVAS、片脚立位保持時間、6m歩行時間、RDQ、ODI、SF-8、ロコモ25にて評価した。

結果:
● 研究①では、対象者全例において運動前後での心拍変動は20%以内、SpO2の変動は4%以内でありBorgスケールは11(楽である)から14(参考:13が「ややきつい」)の間であった。(Borgスケールの参考
● 研究②では、群間比較でDVD群は腰痛のVASの改善、片脚立位保持時間の延長、6m歩行時間の短縮で他群よりも効果があった。また運動プログラムの実施度合はDVD群がパンフレット群よりも有意に高かった。

コメント

セルフエクササイズに関して、運動の内容が同一でもDVDを使用した場合とパンフレットを使用した場合で実施状況や効果が異なる点を示しており興味深い。DVDの場合には映像や音声により運動の姿勢や速度を把握しやすいことや、映像や音声に合わせての運動がパンフレットを見て行う運動よりも心的負担が少ないことが影響しているのかもしれない。この研究では対象者の群分けが完全なランダム化となっていないことや、介入前の身体機能がDVD群で他群よりも低かったことには留意が必要である。
セルフエクササイズの指導や患者教育において,指導や教育の内容だけでなくデバイスやツールも介入効果を上げるためには重要であり、スマートフォンやタブレットPCが普及するなか今後更なる工夫が必要と考えられる。

ホームページ担当委員:下 和弘