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2018-12-13

Topic No.178
人工関節置換術患者における術前リハビリテーションのシステマティックレビュー

Does preoperative rehabilitation for patients planning to undergo joint replacement surgery improve outcomes? A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.
Wang L, et al. BMJ Open. 2016; 6: e009857

要約

目的:
手術を施行する前にリハビリテーションを行うことは、術後の回復を促進する可能性が指摘されている。本システマティックレビューは、人工関節置換術を施行する患者において、術前リハビリテーションの効果を検証することを目的とした。

方法:
2015年11月までに発表された論文を対象に、人工関節置換術患者における術前リハビリテーションの効果を検証した無作為化比較試験を取り込み、レビューした。評価指標には、術後の痛み、身体機能、日常生活動作、QOL、在院日数、費用、患者満足度、術後合併症、有害事象を用いた。

結果:
・22論文を採択し、20論文をメタ解析に供した。
・術前リハビリテーションは、術後4週以内の痛みをわずかに軽減したが(weighted mean differences −6.1 points, 95% CI −10.6 to −1.6 points, on a scale of 0–100)、術後4週以降においては効果を認めなかった。
・術前リハビリテーションは、術後6−8週および12週におけるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)function scoreをわずかに改善させた
・術前リハビリテーションは、階段昇降開始日、トイレ使用開始日、椅子使用開始日をわずかに短縮させた。
・術前リハビリテーションの効果について、人工膝関節置換術と人工股関節置換術を比較した結果、両者は同等の効果を認めた。
・在院日数、SF-36 score、費用については、術前リハビリテーションの効果を認めなかった。その他の指標については、十分な報告がなかった。

考察:
人工関節置換術患者における術前リハビリテーションは、術後早期の痛み、身体機能をわずかに改善させることが示唆されたが、その効果は小さかった。そして、術前リハビリテーションは在院日数、QOL、費用に影響を及ぼさなかった。

コメント

人工関節置換術患者における術前リハビリテーションは、術後痛に対する効果は小さく、短期的であると結論づけられた。本研究の限界には、論文ごとで術前リハビリテーションの内容が異なることが挙げられている。具体的には、運動療法のみを行った論文、運動療法と教育を組み合わせて行った論文、運動療法と栄養療法を組み合わせて行った論文などが含まれている。今後は、術前リハビリテーションの内容について詳細に検討を行う必要があると思われる。

ホームページ担当委員:林 和寛