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2018-11-26

Topic No.20
喫煙と疼痛の関連について

Cigarette smoking and pain: Depressive symptoms mediate smoking-related pain symptoms.
Goesling J, et al. Pain. 2012 Jun, in press

要約

ペインクリニック患者において、喫煙と疼痛との関連とその特性を調査した。

方法:
2010年11月から2011年5月までの期間にミシガン大学の集学的ペインクリニック施設であるThe Back&Pain Centerを受診した患者497名のうち、喫煙関連のデータが明らかであり追跡調査が可能であった426名に対してThe Brief Pain Inventory(疼痛強度,疼痛性障害を評価)およびThe Hospital Anxiety and Depression Scale(うつ状態の評価)によるアンケート調査を行った。
患者は現喫煙者、禁煙者、非喫煙者 の3群に分けられ、喫煙歴、喫煙量、禁煙期間について調査された。患者から得られたデータは多変量共分散解析により処理された。

結果/考察:
426名の患者のうち、32.6%が現在喫煙中、31.7%が禁煙中、および35.7%が喫煙経験なしと回答した。
喫煙者の47.7%は毎日20本は喫煙していると回答、禁煙者の70.5%は5年以上禁煙していた。現喫煙者は禁煙者,非喫煙者の群と比較し有意に疼痛障害およびうつ状態の割合が高かった。
多変量共分散解析の結果、喫煙状態、年齢、性別、教育などの項目が疼痛強度(F = 7.36, P < 0.001)、疼痛性障害(F = 4.03, P <=0.001)、およびうつ症状(F = 7.87, P < 0.001)に対して影響を及ぼすことが判明した。さらに禁煙者においては長期の禁煙期間が疼痛強度低下と相関していた。また、禁煙者のデータは非喫煙者のものとほぼ同様であった。
過去の報告において、喫煙患者では疼痛が増強することが既に報告されているが、今回の研究により特にうつ状態がこれを介在している可能性があることが示唆された。また、うつと疼痛は神経生理学的にはその経路を共有することから、喫煙しているうつ患者ではその相互作用によって痛みが増強している可能性もあり、認知行動療法の導入による疼痛改善が期待される。

結語:
喫煙率は慢性疼痛増悪を惹起する可能性があり、喫煙と疼痛を結びつける一要因としてうつ状態が挙げられることが示唆された。しかし現段階では喫煙がどこまで疼痛改善に影響を及ぼすのかは定かではないが、禁煙期間が長ければそれだけ疼痛が軽減するという結果は有益であろう。より厳密な研究は必要となるものの、慢性疼痛患者の管理において考慮すべき事項である。

コメント

喫煙者における慢性疼痛にうつ状態が関与していることが示された。 喫煙、慢性疼痛、うつ状態のいずれも現代医学では大きな問題となっており、各々に十分対処していく必要がある。特に禁煙の重要性を示唆する報告であろう。

ホームページ担当委員:折田 純久