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2018-11-26

Topic No.18
愛する人の写真は安心感に関連する神経領域を賦活し疼痛を緩和する

Attachment figures activate a safety signal-related neural region and reduce pain experience.
Eisenberger N, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Jul 12;108(28):11721-6

要約

痛み刺激が与えられる際に恋人の写真を見ることで鎮痛効果を得られるかどうか、またそれにはどのような脳内の神経領域の活動か関与するのかを検討した脳画像研究。

方法:
21名(実際に解析を行ったのは17名)の女性健常者に対してfMRIの実験を実施。
被験者に痛みを伴う熱刺激を与え、その際に、①恋人の写真 ②見ず知らずの他人の写真 ③物体(人物でない何か)の写真を見せた。それぞれ、熱刺激による主観的な痛みの強さの聴取とfMRIによる脳内神経活動の評価を行った。

結果/考察:
熱刺激による痛みは、恋人の写真を見ているときには見ず知らずの他人や物体の写真をみているときよりも有意に小さく、痛み関連領域である背側前帯状回、島前部の活動も低かった。 また、恋人の写真を見ることによる鎮痛効果は前頭前野腹内側部の活動と関連がみられた。
前頭前野腹内側部は安心感に関連する神経領域と考えられており、恋人のような愛着を持てるような人物から鎮痛、ストレス緩和の反応を得ることは生体防御反応として人間にシステムとして備わっている可能性がある。

コメント

自分にとって安心できる存在の姿を見ることで安心感に関わる神経領域が賦活され鎮痛やストレス緩和につながることを示唆した論文。 さらにこの論文では、恋人の写真を見ることで得られる鎮痛効果と交際期間との間には相関がないが、鎮痛効果と恋人との主観的な親密さには相関関係があったと報告している点が興味深い。 患者のなかには、「○○さん(医療者)の顔を見ると痛みが和らいだ」と話される方がときどきいるが、患者と医療者のラポールは患者の痛みの軽減にとっても重要ではないかと考えさせられる。

ホームページ担当委員:下 和弘