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2018-12-13

Topic No.167
慢性筋膜疼痛患者の脳灰白質に微細構造異常を認めた

Microstructural Abnormalities Were Found in Brain Gray Matter from Patients with Chronic Myofascial Pain
Xie P, et al. Front Neuroanat. 2016; 10: 1-10

要約

背景/目的:
筋膜性トリガーポイント(MTrPs)の関連痛といわれる筋筋膜痛は,骨格筋を含む一般的な慢性疾患であるが,その根底にあるメカニズムはほとんど解明されていなかった。先行研究において,慢性疼痛が脳灰白質に微細構造異常を誘発し得ることを明らかにされている。しかしながら,慢性MTrPs関連痛を有する患者の脳灰白質が変化を起こすかどうかは不明である。

方法:
本研究では,慢性疼痛患者の脳灰白質におけるMTrPs関連の微小構造変化をモニターするために,脳の微細構造摂動に特に敏感なDiffusion Kurtosis Imaging(DKI:拡散尖度画像。非正規分布に従う拡散)技術を用いた。

結果/考察:
年齢と性別がマッチされた健常対照群36名と比較して,慢性筋膜痛患者群36名は,脳灰白質に微細構造異常を示し,これらの病変は主として辺縁系および疼痛マトリックスに関与する脳領域に分布していることが明らかになった。さらに,右前帯状皮質(ACC)および前頭前野内側(mPFC)の微細構造異常(mean kurtosis)は,疾患の経過(duration of pain [months]:mean ± SD,10.47 ± 5.83)および疼痛強度(VAS:6.69 ± 0.92)と有意な負の相関を示した(ACC-DoP[m]:r2=0.730,mPFC-VAS:r2=0.610)。この結果は,MTrPs関連の慢性疼痛を有する患者の脳灰白質に微細構造異常があることを示す初めの研究報告である。この発見は,MTrPs関連の慢性疼痛に対する適切な治療戦略の将来の発展についての新しい洞察を提供するかもしれない。

コメント

脳画像解析の発展により,痛みに脳内のメカニズムが証明されつつある。本研究のように,これまでは捉えることが難しかった微細な構造変化を可視化できる解析技術は臨床上も非常に興味深い。また本研究では,common diseasesである筋筋膜性疼痛において実際に微細構造変化を証明し,多くの患者へ科学的根拠に基づく説明や治療の提案することへの確信が増し,さらに治療による回復を科学的に確認できる可能性も見出した。今後,これらの詳細な脳解析は,運動療法や認知行動療法の効果判定としても有用な一つのツールになり得る。

ホームページ担当委員:園田 悠馬