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2018-12-13

Topic No.173
濃厚血小板血漿(PRP)の腱障害治療における有効性~無作為化臨床試験のメタアナリシス

The Effectiveness of Platelet-Rich Plasma in the Treatment of Tendinopathy: A Meta-analysis of Randomized Controlled Clinical Trials.
Fitzpatrick J, et al. Am J Sports Med 2017; 45 (1): 266-233

要約

背景:
腱障害(腱炎)に伴う疼痛は、非常に一般的な疾患の一つであるが、アスリート等、繰り返す外傷や刺激により慢性化するものも認められる。近年、濃厚血小板血漿(Platelet-Rich-Plasma;PRP)の腱障害への治療効果が認められつつあるが、報告によってその効果には差が認められ、一定の見解はいまだに得られていない。よって、今回、過去の無作為化臨床試験を渉猟し、メタアナリシスを実施することで、コントロールと比較したPRPの腱障害に対する有効性を確認することとした。

方法:
PubMed、EMBASE、CINAHL、Medlineのデータベースを用いて、PRPを腱障害治療に用いた無作為化臨床試験の内、疼痛の評価を3か月以上行っているものを抽出した。外科手術や腱断裂、筋肉・靱帯の損傷を合併しているものを含む試験は除外した。評価はCochrane Collaboration risk-of-bias toolを用いて、2人の評価者で実施した。解析対象は痛みのベースラインからの変化スコアとした。

結果:
計18試験(1066人の被験者)が解析対象となった。解析対象となった試験の対象疾患は、テニス肘11試験、アキレス腱炎3試験、膝蓋腱炎2試験、肩腱板障害2試験であった。治療に用いられたPRPでは、特にGPS kit(standardized mean difference [SMD], 35.75; 95% CI, 28.40-43.10), MyCells kit(SMD, 31.84; 95% CI, 17.56-46.13), Prosys kit(SMD, 42.99; 95% CI, 37.73-48.25)で調整されたものが顕著な差を以て、効果を示していた。コントロール群はステイロイド注射6試験、生理食塩水注射群3試験、局所麻酔薬群2試験、ドライニードリング4試験、等張性伸張運動1試験、衝撃波2試験であり、コントロール群間での有意差は認められなかった。

コメント

PRPに関してはその効果に否定的な論文も肯定的な論文も散見され、いまだ一定の見解を得ていないというのが実状と考えられる。本論文は多数の臨床試験のメタアナリシスを実施した結果を示しており、本論文の結果を見る限りは、腱障害に対してPRPは一定の効果があるのではと考えられる。PRPの腱障害への効果は、基礎的にはかなりのエビデンスが示されているが、今回のメタアナリシスから、白血球成分を含有したPRPにより高い効果があるという結果が出たことを考え見ると、慢性的な炎症の末、変性した腱繊維や末梢血管に対して、急性期炎症を伴った組織再生誘導を行っているという可能性も示唆されるものと考えられた。日本ではPRPの分離機としてZimmer-Biomet社のGPSⅢと、ヤマト科学社のTriCeLLが高度管理医療機器として承認されているが、その使用にあたっては、別途厚生労働省に法令に基づいた届出が必要となることにも注意が必要であると考えられる。

ホームページ担当委員:岡田 潔