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2018-12-12

Topic No.156
米国大学競技協会トップアスリートの市販鎮痛薬の使用状況

National collegiate athletic association division I athletes’ use of nonprescription medication.
Wolf DA, et al. Sports Health. 2011: 25-8

 

要約

目的:
アスリートは市販薬を使用する頻度が高いことが知られている。今回、米国大学競技協会(NCAA)のDivision I-A(最高レベル)に属するアメフト選手の、市販鎮痛薬の使用状況を調査した。

対象/方法:
51の機関から、1155名のNCAA Division I-Aに属するアメフト選手を対象とした。著者らが過去に報告した「アスリート用の市販薬調査票」を使用してアンケート調査を行った。市販薬の乱用は、推奨された用量を守っていない、もしくは長期間服用を続けていることで定義した。

結果:
アメフトに関する疼痛に対して37%が、市販鎮痛薬の推奨用量を守っておらず、7%は10日以上連用していた。乱用の範疇に入る使用方法である。31%は市販鎮痛薬の使用上の注意を読んだことが無かった。市販鎮痛薬を服用する理由は、41%が疼痛を軽減するためだと答えたが、31%は練習やゲームでのミスを減らすためだと回答した。36%は服用量を増やせば、早く鎮痛効果が得られると信じていた。そして、89%は、アメフト選手は体が大きいからより多くの服用量が必要であると信じている。61%はチームドクターから市販鎮痛薬について正しい服用法を指導されていたが、その他は十分な教育を受けていなかった。

コメント

トップアスリートは、外傷・障害との闘いである。外傷・障害による疼痛は、パフォーマンスを低下させるため、アスリートは鎮痛のためにあらゆる手段をとる。トレーナーによるストレッチ、整体、時には手術を受けることによって疼痛を軽減させる場合もある。鎮痛薬はアスリートが自分で調整が可能な鎮痛手段である。
米国で使用される薬剤の約60%は市販薬であり、その中には鎮痛剤も含まれている。本論文は米国の大学のトップレベルのアメフト選手を対象に調査したものであるが、その結果は非常に興味深い。鎮痛薬についての知識不足から、使用目的、使用量、使用期間についての誤解が多く、乱用の範疇にはいるアスリートも少なくない。アスリートの場合、ドーピングの問題もあるため、薬剤に対する教育は非常に大切である。本邦のアスリートに対しても、学生の時期から鎮痛剤を含めて薬剤に対する教育、ならびに「痛み」についての教育が必要であると考えた。

ホームページ担当委員:園畑 素樹