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2018-12-13

Topic No.176
腰痛を対象としたプライマリケアにおける患者教育のreassurance効果

Effect of Primary Care-Based Education on Reassurance in Patients With Acute Low Back Pain: Systematic Review and Meta-analysis.
Traeger AC et al. JAMA Intern Med. 2015;175(5):733-43.

要約

はじめに:
reassuranceは疾患や症状に対する恐怖や不安を和らげることであり、医療の根幹となる重要な行為である。腰痛においても、種々のガイドラインでreassuranceが推奨されているが、reassuranceのための具体的な方法は明らかでない。症状や対処法について正確な情報を説明する患者教育はreassuranceに有効な方法と考えられる。腰痛では、ペーシングや段階的な暴露療法といった行動学的アプローチを含めた患者教育は復職に効果があるとの高いエビデンスを有している。しかし、患者教育がreassuranceに効果的な方法か否かを検討した報告はこれまでない。本研究では、急性または亜急性腰痛に対するプライマリケアでの患者教育がreassuranceを増大(恐怖や不安を減少)させるかについてシステマティックレビューで検討する。

方法:
プライマリケアにおいて急性または亜急性の腰痛患者に患者教育を行い、介入後にreassuranceをアウトカムとして測定している研究を調査した。MEDLINE(Ovid)、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Central Register for Controled Trailsなどの電子データベースから、2014年6月までに出版された原著論文に対し、reassurance、education、psychoeducation、advice、information、consultation、counsellingなどをキーワードとして該当論文を抽出した。また、患者教育の方法によってreassuranceの効果が異なるのか、患者教育の実施時間、内容、患者教育を提供する専門職でサブグループ解析を行った。

結果:
患者教育を介入として実施した14論文(N=4872)が解析対象となった。これらの論文ではreassuranceを恐怖回避思考や不安、破局的思考の質問紙や医療機関の利用状況で評価していた。患者教育は一般的な介入と比較して、短期(1-4週)も長期(12ヶ月)もreassuranceを増加させる効果があるとの中等度から高いエビデンスが示された。サブグループ解析では、プライマリケア医が患者教育を行うことが他の医療職者(看護師、理学療法士)が教育を行うよりも有意にreassuranceの効果が高かった。

結論:
急性から亜急性期の腰痛患者に対するプライマリケアでの患者教育は、長期間のreassuranceをもたらす中等度から高いエビデンスがある。

コメント

この報告ではreassuranceの評価方法が統一されていないという限界点はあるが、腰痛発症初期に適切な患者教育を行う必要性を示した重要な知見と考える。また本報告では考察にて、患者教育と”画像検査とそれに基づいた説明”の費用対効果が比較されており、患者にとっても社会にとっても患者教育が必要であることが強調されている。特に、医師からの説明・教育は患者にとって影響が大きく、痛みを訴える患者の対応について、痛みを過度に不安に感じないようにどのように症状を説明し、日常生活や身体活動を保つように指導、サポートするかを意識して診療することが重要と考える。

ホームページ担当委員:下 和弘