Topic No.496ヶ月が経過した腰部椎間板術後患者の起床時コルチゾール反応と疼痛に関連した恐れ-回避と疼痛耐性
Cortisol awakening response and pain-related fear-avoidance versus endurance in patients six months after lumbar disc surgery.
Sudhaus S, et al. Appl Psychophysiol Biofeedback. 2012 Jun; 37(2):121-130
要約
本研究は,腰部椎間板術後に認める疼痛症状の進行・再発に関連する要因を検討することを目的に,副腎皮質活性と精神的な疼痛反応(恐れ-回避反応と耐性反応)の関係性について調査した。
方法:
対象は腰部椎間板術後6ヶ月が経過した患者36名とし,副腎皮質活性の指標に起床時コルチゾール反応(CAR),過去3ヶ月間の疼痛強度の評価にnumerical rating scale(NRS),疼痛に伴う能力障害の評価にOswestry disability index(ODI),恐れ-回避反応と耐性反応の評価にFear-Avoidance Beliefs Questionnaire(FABQ)とAvoidance Endurance Questionnaire(AEQ)とが用いられた。
なお,起床時コルチゾール反応は2日間の起床直後(0分),15,30,45,60分後の唾液を用いて計測した。
結果:
NRSはODI,FABQ総得点,AEQ下位尺度の「不安/抑うつ」「無力/絶望」「社会的活動の回避」の間に有意な正の相関関係を認め,腰部椎間板術後に認める疼痛症状は,機能障害と恐れ-回避反応を増悪させることが示唆された。
また,起床時コルチゾール反応(CAR)は,FABQ総得点、及びAEQ下位尺度の「社会的活動の回避」の間に有意な正の相関関係を,AEQ下位尺度である「疼痛にも関わらず積極的傾向」「疼痛固執行動」の間に有意な負の相関関係を認めた。
続いて,CARと相関関係を認めた4項目について,それぞれの平均値より高値を示す群と低値を示す群の2群に分割し,CARの経時的変化を比較した。その結果,FABQ総得点では高値群が低値群に比べ全ての期間でCARが有意に増加しており、逆に「疼痛にも関わらず積極的傾向」と「疼痛固執行動」では高値群が低値群に比べ全ての期間でCARが有意に減少していた。
以上の結果から,機能障害や恐れ-回避反応の増加は副腎皮質活性を亢進させ,耐性反応の増加が副腎皮質活性を抑制することが考えられた。
コメント
コルチゾールは生体にストレスが加わることで視床下部-下垂体-副腎皮質系を介して唾液腺より分泌される。疼痛は精神的および身体的なストレス要因であり,慢性痛においては長期間の持続した痛みによる機能障害や精神的変化などがストレスとなりコルチゾールの分泌量が変化していることが推測されるため,本論文で示された慢性痛によって引き起こされる機能障害や精神的な疼痛反応との関連性についても頷ける結果である。
ホームページ担当委員:坂野 裕洋