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2018-11-26

Topic No.24
CRPSタイプⅠ患者に対する「PEPT」の安全性

Safety of “pain exposure” physical therapy in patients with complex regional pain syndrome type 1.
van de Meent H, et al. Pain. 2011 Jun, 152(6):1431-1438.

 

要約

薬物を用いずにCRPS Type1患者のペインコントロールを行っていく方法として新しく考案された”Pain exposure physical therapy”(疼痛暴露理学療法;PEPT)の安全性を確認した研究。

方法:
対象はCRPS Type1と診断された20名(受傷後、平均6.6±4.1か月)。
“Pain exposure physical therapy”の治療プログラムは、運動療法、セルフケアによるマッサージ、日常生活における強制的な患肢の使用、自主トレーニングで構成された。
運動療法は基本的な理学療法技術を用いた他動・自動関節運動、ストレッチであり、痛みを訴えたとしても、運動負荷量は変更しなかった。治療は6セッション(各1時間)、実施期間は最大3か月とし、CRPS徴候、身体運動機能、活動と参加、個人因子(ADL、QOL等)の評価をベースライン時、治療中、治療後に行った。

結果:
浮腫:2名のみ患肢の浮腫が治療中に増悪したが、それらの他の痛みの項目は改善していた。
表面温度:ベースライン時で患肢と対側との温度差が2℃以上あったのは7名で、そのうち3名は治療中に温度差は消失した。
皮膚色:ベースライン時で18名に皮膚色の異常が認められたが、そのうち10名は治療中に症状は消失し、残り8名は変わらなかった。
痛み:5名が一時的に治療による痛みの増悪を訴えたが、平均としてはベースライン時のVASは58.2±3.2、治療中は38.2±6.6、治療後は25.1±3.1と有意な改善が認められ、他の痛みに関する評価でも改善が認められた。
関節可動域:ベースライン時における患肢と対側の差を100%とすると、治療後は34%まで改善した(上肢を患部とする11名)。
筋力:ベースライン時における患肢と対側の差を100%とすると、握力は48%、足関節屈筋力は52.7%まで改善した。
その他の身体運動機能評価:10m歩行、Timed up-and-go test (TUG)、上肢機能評価 (DASH) 、PainDisability Index (PDI)の成績はすべて治療により改善した。
個人因子:タンパ運動恐怖症スケール(TSK)の点数は治療により低下した。また、SF-36の全体的健康感に関する5項目には変化は認められなかったが、「1年前と比べての健康の変わり」を問う1項目(「はるかに悪い」~「はるかに良い」を0~100点換算)に関しては、治療により点数の有意な上昇が認められた。

コメント

“Pain exposure physical therapy”によるCRPS徴候の増悪は認められず、安全性が確認された。また、運動機能の改善だけでなく痛みの軽減効果も得られており、鎮痛薬を用いずにペインコントロールを行っていく方法の可能性が示されている。正常な日常生活に焦点を合わせて、疼痛に屈せず運動プログラムを行うことが効果的である。。

ホームページ担当委員:中野 治郎