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2018-12-12

Topic No.159
CRPS type-1に対する暴露療法の効果-ランダム化比較試験-

Expose or protect? A randomized controlled trial of exposure in vivo vs pain-contingent treatment as usual in patients with complex regional pain syndrome type 1.
den Hollander M, et al. Pain 2016; Epub ahead of print

要約

はじめに:
痛みに対する恐怖心はCRPS患者の能力障害(disability)を引き起こす要因になることは既に明らかにされている.このような痛みへの恐怖心は,痛みに暴露をさせていくと運動が減少することも報告されている.しかしながら,CRPS患者を対象とした暴露療法のランダム化比較試験は実施されていない.本研究の目的は,暴露療法と通常の痛み治療との効果を比較することと,暴露療法が痛みの重症度・身体能力障害・生活の質へ与える影響を調査することである.

対象/方法:
対象:Budapest criteriaを満たした成人CRPS type-1(46名).対象者を「暴露療法群」と「通常の痛み治療群」の2群に分けてそれらの効果を比較する.

評価項目:痛み恐怖心は「Photographic Series of Daily Activities: PHODA」,「Pain catastrophizing Scale: PCS」で評価.能力障害(disability)は,「Radboud Skills Questionnaire: RSQ」,「Walking Ability Questionnaire: WAQ」で評価.生活の質は,「SF-36」で評価.痛みは,「Numerical Rating Scale: NRS」で評価.

暴露療法(exposure in vivo: EXP):身体能力障害の改善を主な目的としており,恐怖を感じる運動を積極的に実施する.17週間で合計17時間以上にかけて痛みの暴露療法を実施.
通常の痛み治療(pain-contingent treatment as usual : TAU):現在痛みを感じる身体部位を安静にして,マッサージ・電気刺激・代償運動トレーニング・姿勢についてのアドバイスなどを中心に実施する.

結果:
介入期間17週直後における,痛み重症度・能力障害・痛みの恐怖心・生活の質の全てにおいて「暴露療法群」の方が「通常の痛み治療群」と比較して有意に改善していた.この改善効果は,介入期間が終了してからの6ヶ月後にはさらに明確になった.

考察:
痛みに暴露させる治療は,恐怖心や回避行動を改善させることによって痛みを軽減させたと考えられている.さらに,介入終了した後にも改善し続けている点に関して,CRPS患者が痛みの暴露療法を通して,「痛みを伴う運動は悪いこと」という誤った考えを「痛みがあっても運動をするべきである」という考えに改まったことによって,日常生活での活動量が増大したからではないかと考えられている.

コメント

痛みを抱えながらでも運動療法をすることによって,CRPS type-1の痛みが改善するということを示した重要なエビデンスであると考える.しかしながら,本研究でコントロール群として設定している「通常の痛み治療群」においてはガイドラインで推奨されているような治療を選択していないことから,比較対象を再検討していく必要があると感じる.とはいえ,痛みへの暴露による治療の効果量は過去の研究と比較しても高い水準にあることから,今後のさらなる臨床研究が期待される.また,近年注目を集めている認知行動療法や患者教育とコンバインさせた場合にはより高い効果が期待できるのではないかと考える.

ホームページ担当委員:大住 倫弘