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2018-11-15

Topic No.11
線維筋痛症患者の灰白質密度の減少がみられる部位とドーパミン代謝との相関関係

Changes in gray matter density in fibromyalgia:Correration with dopamine metabolism.
Wood PB, Glabus MF, Simpson R, Patterson JC. J of Pain 10: 609-618, 2009.

 

要約

線維筋痛症患者の灰白質密度の減少がみられる部位とドーパミン代謝との関係について調査した。

方法:
30名の線維筋痛症(FM)患者(女性)を対象に、VBM ( Voxel-based morphometry)を用いて、灰白質密度の減少がみられる部位を調べた。さらにPETを用いて、放射性標識DOPAを使用し、灰白質密度の減少した部位とドーパミン代謝との相関関係が存在するかどうかを調べた。

結果:
FM患者では、前部帯状皮質膝周囲(perigenual cortex;PGC)と両側の海馬傍回(parahippocampal gyrus;PHG)で灰白質密度の減少が認められた。
また灰白質密度の減少がみられた両側海馬傍回(PHG)、右後部帯状回(PCC)、左前帯状回(ACC)で、灰白質密度とDOPA取り込み、ドーパミン代謝との間に正の相関関係が認められた。

コメント

ドーパミン代謝の変化が灰白質密度の減少に関係するのではないかと考えられた。 海馬と前部帯状皮質膝周囲は、中脳・腹側被蓋野、側坐核からの中脳辺縁系dopamine neuronから投射を受けており、ドーパミン作動性中枢性鎮痛機構を担う部位である。慢性疼痛とは、中枢性鎮痛機構がうまく働いていない状態であると推察される。 前部帯状皮質膝周囲は、serotonin transporterの分布密度が皮質中で最も高く、セロトニンを周りから取り込んでneuronに供給する役割をしている。脳の広範な神経核に送られるセロトニンは、不安情動の処理、睡眠や摂食機能、気分、喜びの感情など、さまざまな身体・精神活動に関与している。前部帯状皮質膝周囲の機能が低下すると、慢性疼痛に特有なうつ状態や睡眠障害など様々な影響が起きると考えられる。前部帯状皮質膝周囲、海馬傍回の活動低下は脳の情動処理過程の機能低下と考えられ、情動調整の不全が痛み行動として発現すると考えられる。

ホームページ担当委員:福井 弥己郎