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2018-11-15

Topic No.8
高齢者の腎不全とNSAIDs

Nonsteroidal antiinflammatory drugs and acute renal failure in elderly persons.
Griffin MR, et al. Am J Epidemiol. 2000 Mar 1;151(5):488-96.

 

要約

高齢者の腎不全とNSAIDsの関係を調査した報告。

方法:
NSAIDsによって腎臓のプロスタグランジン産生が減少することにより腎機能が低下する可能性があり、特に循環動態が不良な状態の患者では著明である。1897年から91年のテネシー州の65歳以上のMedicaid保険の加入者で後天的な急性腎不全で入院した患者のデーターベースを調査した。NSAIDsの投与時期、投与期間、投与量を記録した。1799人が急性腎不全で入院した。(1000患者-年に対して4.51入院)この報告では、プロスタグランジンに関与する腎不全を解析するため、腎不全の原因が間質性腎炎interstitial nephritisや閉塞であるものは除外した。腎不全の定義は血中クレアチニンが180 (imol/liter (2 mg/dl)以上もしくは、通常より20%以上上昇しているもの、また入院にて20%以上低下したものとした。透析患者などの腎臓病の末期状態は除いた。

結果:
1799人腎不全患者のうち18.1%がNSAIDs投与中であり、コントロールの11.3%に比較して高かった。NSAIDsの腎不全に対するリスクのOdds ratioは1.58であった。NSAIDsの使用期間別のOdds ratioは、使用開始30日以内が2.83、180日以内が1.68、180日以上が1.65であった。
piroxicam, fenoprofen, indomethacin、2剤以上併用もリスクは高い。
ibuprofenの場合、用量依存性に腎不全になりやすくなる odds ratio は1,200 mg/day以下で0.94、1,200-<2,400 mg/dayで1.89、2,400 mg/day 以上で2.32であった。ibuprofen, fenoprofen, indomethacin,は用量依存性が認められている。過去のNSAIDs使用歴はリスク上昇とはなっていなかった。市販の鎮痛薬の影響は除かれていないが、現在のNSAIDsによる腎機能低下のリスクは高い。

コメント

NSAIDs短期使用の方が腎不全のリスクが高いとの調査であるが、むしろ長期間使用できる症例のみが使用を継続している可能性がある。日本ではクリノリル(Sulindac)は腎機能に影響が無いとして投与されていたが、この報告では他のNSAIDsと同等のリスクがあるとの報告である。日本腎臓学会のガイドラインにもあるように、どのNSAIDsも安全は確認されていないというのが本当であろう。

ホームページ担当委員:三木 健司