脊髄損傷と慢性疼痛についての入門編
ヒント1
脊髄損傷後の痛みは
よくみられる症状です。
ヒント2
脊髄損傷後の痛みには
いくつかの異なるタイプがあります。
ヒント3
自分の痛みが
どのタイプであるか知っておくことが大切です。
このエピソードでは、脊髄損傷後の慢性疼痛について学習します。多様なタイプの痛みについて知り、自分の痛みのタイプを特定する方法について、また痛みが急速に悪化するフレアアップへの対応と、警告サインの認識についても学習していきましょう。
各ビデオを見たら、「私のヘルスプラン」のリンクにアクセスし、あなたの進捗状況や目標を記録してください。医師や医療従事者があなたに合った治療プログラムを作成できるよう、脊髄損傷の痛みアンケートに記入してください。
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- 5分でわかる「痛み」と「痛みへの正しい対処法」!! Youtube
- http://sci.washington.edu/info/pamphlets/msktc-pain.asp
University of Washington - http://www.uab.edu/medicine/sci/uab-scims-information/secondary-conditions-of-sci-health-education-video-series
University of Alabama - http://www.youtube.com/watch?v=scrDMPFWMUc&list=UU4j6sh0E4Hp2QckBliigxsA
Mr Joe O’Donnell - http://www.aci.health.nsw.gov.au/resources/consumer-resources
NSW SSCIS - http://www.paraquad.org.au/factsheets/
Paraquad NSW - http://www.painaustralia.org.au/consumers/reading-materials.html
Pain Australia
Transcript: 脊髄損傷と慢性疼痛についての入門編
脊髄損傷後の痛みは非常によくみられる問題で、60~70%もの患者さんが6カ月以上続く痛みを経験します。
これを「慢性疼痛」と呼んでいます。
約1/3の人では、かなり重度の痛みになる可能性があります。
痛みは、日常生活にたいへん大きな影響を及ぼすことがあります。
自立した生活を送ったり、日常的な作業を行ったりする能力、
職場復帰や社会活動、人間関係にも支障を来す可能性があります。
痛みは患者さんの生活の様々な面に影響します。
睡眠の質にも影響をもたらしますし、情緒面では、不安や抑うつが強くなります。
そこで、このウェブサイトでは、痛みについての様々な情報を提供し、慢性疼痛をもつ患者さんの体験談を豊富に紹介しています。
例えば、患者さんが日々どのような方法で痛みに対処しているのか、薬だけでなく、痛みを軽減し管理するのに役立つ他の対処法についても紹介しています。
私の脊髄損傷はT12でそのため骨盤から下に障害があります。
痛いとこんなにも衰弱させられ、消耗するということには、とても驚きました。
生活のあらゆる面に影響が出ました。
もちろん睡眠にも。
痛みは眠りを妨げますし、とにかくやること全てを邪魔します。
初めは驚くばかりでした。
先ほども言いましたが、感覚のないところが痛くなるとは知りませんでしたので。
痛みは断続的にとてもひどくなり、何もできなくなります。
普段の生活を送れなくなってしまうのです。
こんにちは、ブライアンです。
2005年に脊髄損傷を負いました。
L1とT12の損傷で不完全対麻痺があります。
損傷を負った当時は、下肢のひどい知覚過敏に苦しみました。
チクチクする感じがひどく、怪我を負ってから、また外出を始めたときには、膝に風があたると痛み、触れられても痛みました。
こうやって膝をなでるだけでも痛かったのです。
ヴィトといいます。
四肢麻痺です。
1987年にビーチで、海に飛び込んで首を骨折しました。
レベルはC5/6で、不完全四肢麻痺です。
痛みは私のもつ障害の中で大きいものです。
痛みによってたくさんのことができなくなりますから。例えば、痛みがあると車への乗り降りが制限されてしまいます。
股関節のひねり方によって、脚の側面に途方もない痛みが走るからです。全く厄介なことです。
けいれんも起こります。
けいれんは、私が痛いことを感じられないために起こります。
自動的にその部位にショックが送られ、震えが始まります。
こうなると、何もできなくなります。
出かける予定をしていても、ときどき肩と首がとても痛くなり、横になって痛みを鎮めるしかなくなります。こうして日常生活が妨げられます。
脊髄損傷後の慢性疼痛はよくみられる症状です。
慢性疼痛には、脊髄自体の損傷や損傷したレベルにある神経の損傷、
またこれらの損傷の結果として起こる神経系の二次的な変化、
さらには日常活動により腕にかかる荷重、体の使いすぎ、加齢による変化などが複合的に関連しています。
脊髄損傷後に起こる疼痛には,いくつかのタイプがあります。
まず、脊髄の損傷部位またはそれより下の方で感覚が低下または消失している部位の痛みがあります。
あるいは、感覚が正常に維持されている、損傷部位より上の方でも痛みが起こることがあります。
脊髄損傷後に非常によくみられるのは、損傷部位より上の方で起こる疼痛で、「筋骨格痛」と呼ばれます。
これは、肉離れや関節の負荷ないし炎症によって起こり、誰もが経験するタイプの痛みです。
これは、誰もが経験するタイプの痛みで、肉離れや関節の負荷ないし炎症によって起こります。
日常生活で車いすをこいだり、車いすを乗り降りするときに、関節に摩耗や亀裂が生じたり、筋肉を痛めたりします。
損傷部位より上の方で鈍い痛みを感じることが多いですが、鋭くずきずきと痛むこともあり、動かしたり特定の姿勢をとったりすることで悪化し、安静にすることで軽減します。
これらの痛みの中でよくみられるのは、肩の痛みです。
慢性的な肩の痛みや手首の痛み、損傷のあったレベル周囲で首や背中の痛みがよくみられます。
脊髄損傷後に患者さんが経験する他のタイプの痛みに「内臓痛」と呼ばれるものがあります。
これは腹部に感じることが多い痛みで、内臓の機能障害や炎症と関連しています。
最も多いのは便秘、または尿路感染症、膀胱結石や腎結石に関連する炎症によるものです。
一般に感覚が低下しているか消失した部位で起こるため、患者さんが感じるのは、鈍く、うずくような、ぼんやりとした痛みです。
性質としては断続的であったり、さし込むような痛みやけいれんを伴う痛みであることもあります。
損傷部位より上の方では、神経痛も起こる可能性があります。
最も頻度が高く、約50%の患者さんでみられるのは、手首にある手根管と呼ばれる部分から手の方に出てくる神経の痛みで、移乗や移送あるいは車いすの操作を行う際にこの神経が圧迫されることで生じます。
また他に、「神経障害性疼痛」と呼ばれる痛みも多くみられます。
これは、脊髄に損傷があったレベルの周囲や、それより下の方で起こります。
しばしば非常に重度となるこの痛みは、熱く焼けるような痛みであることも、冷たく凍るような痛みであることもあり、ずきずきするしびれ、ピンや針で刺されるように感じる場合や、電気ショックのように感じる場合もあります。
そのため疼痛の種類を判断し、原因を理解することが役立ちます。
例えば、動かすことで良くなるか、悪くなるか、安静にすることで軽減するかなど、痛みのタイプに応じた特徴から、最善の治療方法を明らかにすることができます。一般に、痛みのタイプが異なると、治療のための薬の種類だけでなく、対処方法も異なってきます。
医療従事者が痛みの種類を判断し、より良好な管理方針を選択する上で役に立つ情報としては、例えば痛みの部位、損傷部位より上の方か下の方か、感覚が変化した部位の痛みか正常な感覚のある部位の痛みかといった情報があります。
また、痛みの特徴も大切な情報です。
熱感があるのか、鋭い痛みなのか、刺すような痛みなのか、電気ショックのような痛みなのかといった痛みの性質についてです。鈍く、うずくような痛みもありますし、姿勢を変えるか、動くことで変化する痛みもあります。
一日のうちで良くなる、あるいは悪くなる時間があるのか、一日を通して変化するのかといった特徴もあります。
そのため、ご自身の痛みのレベルを知り、日々の変化を把握しておくと、非常に役立ちます。
痛みの様子が大きく変わった場合、それは対処する必要のある問題が潜んでいることを示しているかもしれないからです。
損傷部位より下では、骨盤より下に痛みがあります。
強く、押しつぶされるような痛みです。
足が特にひどく痛みます。
それから太ももと右脚のあたりもですね。
この種の痛みはずきずきとしてとても重い痛みです。
とても熱く感じられることもありますし、ときには電気ショックのように感じられることもあります。
損傷部位より上の痛みは、どちらかと言うと筋肉や骨の痛みですね。
脊椎に負った損傷と受けた手術によって、多くの筋肉が弱くなり腰痛が出るようになりました。
この痛みは損傷部位より下の神経障害性の痛みとはかなり違って、ひどい肉離れを起こしてしまったような痛みです。
損傷部位より上では主に手首が痛く、鋭い神経の痛みがあります。
車いすを使っていることから来ていると思います。
手首を前後に動かしますから。
損傷部位周辺は、しびれるような感じがします。
背中は大丈夫ですが、横側と前側に感じます。
損傷部位より下でいちばん気になるのは、脚の前側の、膝の少し上から少し下までの「知覚過敏」と言われるものです。
神経痛のような感じがして、風が当たったり、このように触ったり、脚の毛が動くだけでも、皮膚の表面がチクチクと痛みます。
損傷部位より下では、他にもハムストリング筋や太ももの筋肉のひどいこわばりに悩まされています。
こうやってずっと座っているので、筋肉が縮んでしまっているのです。短い距離は杖を使って歩くこともありますが、歩くとすぐに脚が疲れ、こわばってしまいます。
損傷部位より上の痛みは、誰かに首をつかまれ、神経をねじられているように感じます。
筋肉がねじられてこわばっているので、痛みを和らげるには首を伸ばすようにして戻さないといけません。
そうすると自然に痛みがゆっくりと引いていきます。同じ姿勢で長くいるので、本当に誰かに首を引っ張られているために痛みが起きているように感じます。
下の方の痛みは、締め付けられるような痛みです。
これもまた、誰かに背中、腰のあたりをぎゅっと強くつかまれ、締め付けられているように感じます。
ときどき痛みがとてもひどく、息が止まるかと思うくらいです。
それぐらいひどいのです。
痛みの強さは一日の間にも、日によっても、ほとんど常に変化します。
それはこの状況では正常なことです。
ただし、痛みがかなり強くなった場合や、痛みの性質や特徴が変化した場合は、それは検査が必要であることのサインですから、できるだけ早く医師の診察を受けてください。
いつもは安定している痛みが急にひどくなる、あるいは部位や性質などの特徴が変化する場合には、その痛みの悪化はただのフレアアップではないというサインかもしれません。
特に、筋力や感覚の敏感さの変化、けいれんの増加、排尿や排便の変化、自律神経過反射といった症状は、
何か異常が起こっていて、調べる必要があるというサインである可能性があります。
前に一度、背中に痛みが出たことがありました。
普段は痛くない場所がかすかに痛みだして、数日かけて悪化していき、前にはなかった新しい痛みだと気づきました。普段の痛みではありませんでした。
そこで病院に行きX線検査を受けると、手術で背中に入れてもらっていた金属の部品同士が分解して、固定されていた背中の骨が動くようになっていて、さらにネジやプレートも動いていたことが分かりました。
それで背中が痛かったのです。
そのときの痛みは「何かがおかしい」と感じられるものでした。
誰にでも痛みはありますが、普段と何か違う痛みだったり、痛みがひどくなり始めたら、チェックしてもらう必要があると思います。
私の場合、灼熱感を伴うひどい腹痛が起こると、普通それは膀胱や尿路の感染によるものです。
刺すような痛みやうずきを感じ、けいれんも起こります。けいれんは、私が痛みを完全には感じられないため、体が何らかの異常を知らせようとして起こります。
そして突然、フレアアップが起こり、血圧が上がっていきます。
体が自動的に自律神経過反射を引き起こすのです。
頭がガンガン痛み、血圧が急上昇します。
自律神経過反射のときには、血圧が200以上になったこともあります。
今では、痛み方がいつもと違うときには、体の中で何かが起こっていて、通常のフレアアップとは少し違うのだと分かるようになりました。
それでも、常にひどい痛みにさらされているため、何か変化があった場合にそれが異常かもしれないと学習するのは簡単ではありませんでした。
私の場合、残念ながら2回ほど床ずれに気づくのが遅すぎたことがあり、足指を一本あやうく失うところでした。
質の良い生活を送ることは可能です。
私には常に何か夢中になれることがあり、痛みや何か他のものに体を支配されている暇がないからです。
何かに夢中になっていれば、9割方痛みを忘れることができます。
私はとても忙しい社会生活を送っています。
友達や家族がたくさんいて、定期的に出かけて行って会い、一緒にレストランで食事をしたりします。
楽しいことをして痛みを閉じ込めてしまうのが私のやり方です。
外に出かけて、人と会って楽しむのです。
そうやって私は、痛みとともに生活することは可能だと気づきました。
痛みをコントロールする方法を学ぶ必要があります。
そして、楽しいレクリエーションの選択肢をいろいろ探ってみることです。
できないと感じていることでも、実際にはただの思い込みかもしれません。
痛みに支配されるのではなく、こちらが痛みをコントロールすることが大切です。
怪我をした後も昔から大好きで情熱を持っていた趣味を続けているので、質のよい生活を送れていると思います。
キャンプには今も行きますし、釣りも続けています。
趣味のアウトドアを続けることで、また外の世界とつながりを持つことができました。
この趣味は痛みに打ち勝つ気持ちを養ってくれました。
痛みを忘れることができるし、外に出ることを楽しみに頑張ることができます。
そうすることで、痛みとうまく付き合っていくことができます。
このウェブサイトにある情報やビデオを活用して、役に立つ対策を詳しく学んでください。
脊髄損傷後の痛みとともに生活している患者さんのインタビューでは、疼痛管理の方法を直接聞くこともできます。
脊髄損傷の痛みに関するアンケートをダウンロードしましょう。
アンケートには、あなたがもつ痛みのタイプを説明するための質問や、医師に相談すべき警告サイン(レッドフラッグ)を特定するための質問があります。
警告サイン(レッドフラッグ)とは、深刻な問題が起こっていて、対処の必要がある可能性を示すものです。
あなたの医療チームとコミュニケーションをとるときのために、日記や痛みの記録をつけておくのも役立つかもしれません。
ビデオの画面下にある「私のヘルスプラン」のリンクからPDFファイルをダウンロードして、疼痛管理計画を作成しましょう。
印刷してください。
それぞれのビデオを見終わったら、適切な項目に書き込んでください。
一度記入していただくだけで結構です。
記入した「私のヘルスプラン」は、かかりつけの医師(GP)や医療従事者の診察を受ける際にお持ちください。
痛みを管理するうえで、素晴らしいスタートポイントとなるでしょう。